と、ある秋の夕暮れ。  

少し西の空が朱を描き始め、夕暮れが近いのが分かる。

いつのまにか、セントラル・パークの中の散歩道にも

落ち葉が足元を覆うほど落葉する時期になっていた。

 そんな散歩道を新次郎と昴は、ゆっくり歩いていた。

 ただ何のも目的も無く、二人は歩いてる。

「もう秋も終わりですね。ついこの間、夏が終わり秋になった

ばかりと思っていたのに…… 来月はもう年末ですし、昨年の今頃は

信長との戦いで季節をこうして楽しんでいる暇もなかったけど」

昨年の今を思い出しながら、新次郎は昴に語り掛けた。

「人間色々多忙の生活をしていると、時の流れる時間が早く感じる

だけさ」

「そう思うとそうですね。でもやはり季節を感慨深く感じることも人間

にとっては大切だと思いますよ」

 新次郎は、歩道から少し離れた銀杏の木の下に屈みこみ、その葉を手に

取ると昴の元に再び戻ってきた。

「紐育には紅葉(もみじ)らしい景色も楓の木もないけど、銀杏だけはあるから、

なんとなくなんですけど紅葉(こうよう)を感じられませんか ? 」

 銀杏の葉を昴に渡しながら、新次郎は優しく尋ねた。

「君もロマンティストだね。それだけで気分に浸れるとは…… 確かに四季折々の

風景は美しい。昴も紅葉を見るのは癒されるのは確かだ。決して、人の手

によっては作れない自然の美しさをね」

 銀杏の葉を受け取った昴は、それをまじまじと見つめながら、葉で口元を

隠しながら笑み返す。

「僕もそう思います。でも星組の舞台も負けていないと思います。一生懸命

誰かを楽しませたい気持ちに満ち溢れているから、美しく素晴らしいです」

「今日の新次郎は、ロマンティストだったりお世辞が、うまかったりだね。

でも気持ちはありがたく受け取っておくよ」

 ふふふ…… と、昴は礼を言う。

「お世辞なんかではないですよ。僕は本当にそう思ったから言ったんです。

僕にとっては星組の中で一番輝いている存在ですから

 少し頬を染め上げながら、新次郎は笑う。

「本当によくそんな歯の浮くような事を言えるね、君は…… 」

 照れるところか、半ば呆れ帰って昴は苦笑する。

「昴さんが、どう思われても、これが僕の気持ちだから」

 照れながらも、その気持ちを貫く姿勢が、真っ直ぐの新次郎らしく

昴にはそれが嬉しかった。

「ありがとう。君の気持ちを素直に受け取らせてもらうよ、昴も君と共に過ごせて

素晴らしい日々だったと思っている。そしてこれからも君と共にこの街で過ごし

歩きたいと思う。これからずっと、ね…… 」

 どこか照れてはいるが、昴は新次郎に自分自身の願いを語りかけながら、小さく

微笑んだ。

「一緒ですよ、ずっと…… 」

 そう答えると、新次郎は昴の右手を優しく握る。

 昴もまた、それに答えるように握り返す。

 お互いの暖かさが、秋の寒さに冷えた身体に沁みこんで心身ともに暖まる。

「少し冷えてきましたが、そろそろ帰りますか ? 」

「もう少し歩いて行こう。今、昴は新次郎と共に歩いていたい」

 握っていたその手を昴は少し強く力をいれる。

「じゃ、もう少しだけ歩きましょう…… あ、昴さん、これお貸しします。

役者は咽を冷やさない方がいいですから」

 新次郎は、自分の首に巻いてあったホワイトのマフラーを昴の首に巻いて

あげる。

「ありがとう。それでは新次郎は寒いじゃないか。無理しなくてもいい」

 その行為は嬉しいのだが、新次郎の事を考えると、昴は少し気が引

けている。

「大丈夫ですよ。僕は寒いのは平気なんです。それに、昴さんの前で少し

くらい格好つけたいんですよ」

 照れ笑いを隠すような、苦笑を浮かべる。

「君は本当に面白いよ。わかった、今日は素直にその気持ちを受け取らせて

もらうよ。でも風邪は引かないでくれ、そしたら昴のせいになる」

「引かないですよ…… あ、でも、もし引いたら昴さんに看病してもらえる

から、いいかも」

 新次郎の脳裏に、冷えたタオルを額に乗せ、ベッドで寝込んでいる新次郎の

目の前に、昴の手作りのおかゆを、その手で食べさせてくれる妄想が浮かび上

がる。

 妄想して思わず顔がにやける新次郎を見て、昴は嘆息をつく。

「昴は、そんな邪の考えを抱く奴の看病なんかしない、けど素直な病人だった

なら、看病してあげなくもない。でも、なるべくなら病を負わないのが懸命だ」

 少し意地悪で釘を刺すような返事を返しながら、彼の方を向いて笑みを浮かべる。

「はい、十分気をつけます」

 新次郎もそう、嬉しそうに微笑み返す。

「さあ、もう行きましょうか」

 立ち止まっていた二人は、再び歩き始めた。

夕暮れが近く、段々と気温が下がり始めたパーク内であったが、

人気も少ない歩道を二人だけは、繋いだ暖かい手によって、寒さなど

感じることなく、歩んでいくのだった。

                   とりあえず終(笑)

  

す、すみません。なんだか甘ったるい話で〜。
なんだかいつも、同じような展開のような話で(汗)
ちなみに、この作品は2006年11月5日に開催されたタイガーマニアックス3で当スペースで
無料配布されたペーパー冊子に掲載したものです〜。