『あなたに会えてよかった』




 時計の針が、まもなく12時を刻もうとしていたのを薫は、目で確認をする。

「ん…… どうした薫 ? 」

 ベッドで自分の腕の中で眠っていたと思っていた薫に気づき、皆本は尋ねた。

 そもそも、今夜は薫の方から誘いをかけてきたこともあり、彼女の様子が妙なのに気がついていたのだが。

 ほんの少し、時間は遡る。

「ねぇ、皆本…… 今夜、皆本の部屋に行ってもいいかな ? 」

 皆本の家で、紫穂、葵と薫、四人でいつものように夕食を取り、

薫と二人きりとなった際に彼女は、彼に小声で誘いの伺いを立てた。

「いいのか…… ? 夜に僕の部屋に来たら、あの二人に勘付かれるぞ ? 」

 珍しく薫からの誘いだったのだが、葵と紫穂に勘付かれ後で嫌味を言われる可能性が高く、皆本は少し戸惑う。

「大丈夫だよ、あたしの部屋なら窓側だし、こっそり抜け出せばバレないよ。じゃ、行くから ! 」

「お、おい、薫 ! 」

 彼の返答を聞かぬ間に、薫は足早に去っていく。

 今現在、薫たちは正確には皆本の家には住んでいない。

 中学生までは、それなりに同居出来ていたのだが、

さすがに高校生になると互いに意識を感じ始めたこともあり、

小学校卒業直後の同居騒動のようにはならず、自然に同居を解消することになる。

 しかしながら、三人の新たな引越し先は、彼の住む家の隣の部屋である。

 あまり変わらない環境ともいえるのだが、少しだけそれぞれに私的な時間と場所を得る事になった。

 それぞれが、自分だけでいたい時間も欲しがる年頃でもあったのだから。

 そんなこともあり、常に皆本の共に過ごしていた時間も少なくなる中、

心身ともに成長し続ける薫と、少し前に些細なきっかけで関係を持つ事に。

 まだ子供だからと、安気に考えていたのもつかの間、

互いの存在を異性として意識をし始めたらと思った頃には、あっという間の出来事。

 それでも、自分は指揮官だ、保護者的立場と言い訳をして理性を保っていたのだが。

 以来、周囲の目を掻い潜りながら関係を続かせていたというのに、

今夜に限り大胆な行動を起こしてきたのだ。

 夜遅くに、気づかれないように皆本の寝室に現れた薫は、程なく情事に更けこむ。

 自分の内面から湧き出る女の悦びを知り、それを余すことなく溢れ出していた。

 幼い頃、背伸びし続けた性への憧れとは別ともいえる女としての歓びに酔いしれる。

 それは、皆本も同じだった。

 きっかけはどうあれ、成熟した若く瑞々しい薫の味を知ってしまったこともあり、

情事の最中は、二人の立場など忘れ男と女として求め悦ぶ。

 彼の前でしか見せない女としての素顔を見るのが、自分だけの楽しみであり悦びでもある。

 今夜もこうして共に絶頂を迎え、つかの間の眠りについていたのだが。

 丁度、時計の針が12時を刻む。

「ねぇ…… 皆本、今日が何の日か覚えているよね ? 」

「…… 何って…… 」

 唐突に、薫は皆本に尋ねるのだが、彼は少し首を傾いで考えているが思い出せない。

 何か、大事な用があったのかなと考えるぐらいで。

 そんな彼を見て、薫は憮然となり不機嫌か顔つきを見せた。

「…… あたし、さっき16歳になったんだけどな」

「え、あー、思い出した。730日は薫の誕生日だったんだな…… 」

 薫に指摘され、ようやく今日が何の日か皆本は思い出したようだ。

「忘れていたんだ」

「す、すまん。忘れるつもりじゃなかったんだが…… 」

「どーせ、皆本はあたしの事なんて、どーでもいいんだ。体だけ欲しいだけで」

 薫は彼の腕の中で、願えると拗ねたように背を向けてしまう。

 女性は記念日を大切にしたがることを、彼はここで痛感する。

 特に、薫は意外とロマンティストな面も持つこともあり、

誕生日を忘れていたと知れば怒っても当然の事だった。

「僕が悪かったよ。でも、体目的とか言わないでくれ…… 僕はそんなつもりではないんだから」

「…… 」

 謝る皆本を背にして、未だ薫は無言でいる。

 余程、立腹しているのか。

「子供じゃないんだから、機嫌治してくれないか ? 」

「どうせ、子供だもの…… あたし」

 背から答える声に、少し寂し気さを感じている。

 そんな背中を見て本当の所、皆本は可愛らしさを感じていた。

 人一倍、寂しがりやである彼女が、まだ残る子供らしさと、

彼に女として見てもらいたいという狭間にいる姿が愛おしいのだ。

「そんなことは無いよ…… 君は、魅力的だから」

 背後から薫を包み込むように抱きしめながら、耳元に彼は甘く慰めるように囁く。

「嘘」

「嘘じゃない。そう思えなかったら薫を抱かなかったよ…… 

僕だって、
10歳の頃から側にいた君を抱く日が来るなんて思わなかったさ。

でも、僕自身の中で大きくなっていた君の存在に抗う事が出来なくなったんだ。

薫という女性に惹かれているんだ僕は…… 」

 甘すぎる皆本の告白に薫の胸は不思議と弾むのだが、まだ釈然とはせず不機嫌さを残している。

「んっ」

 やれやれとした面持ちで、皆本は抱きしめていた薫を自分の方にゆっくり向けると、

その上に乗りかかるように、彼女の顔を吐息が互いにかかるほど間近で臨むと、深い濃密なキスを与え交わす。

 情愛のこもった皆本からのキスに、機嫌を損ねていた薫も次第に己を絡め合わせていく。

 不思議とそうしているだけで、皆本からの自分に対する愛情を感じることが出来るのだ。

 絡め交し合うだけで、互いの脳内は溶け出しそうなほどの解放感と、

体の奥底から湧き上がる熱さを帯びるの感じながら一体感を味わう。

 どんだけ、自分が拗ねようと己の気持ちに嘘は付けない。

 あたしは、皆本の事が好きでたまらないのだ。

「ずるい…… 皆本は、いつもこうしてあたしを満たしちゃうもん。こうなったら、何も言えないよ」

 結局、今宵数度目の絶頂まで致してしまった薫だったが、どこか満足気でいる。

「それだけ、僕は薫が大切なんだよ。愛おしくて、ついつい愛しすぎちゃうのかもな」

 自身の中で未だ熱を帯びている姿を横目に、皆本は苦笑を浮かべる。

 情愛を込め、薫を抱く事を彼は止めることは出来ないほど夢中になる。

 愛しき存在だからこそ、深く繋がり心身共に一つに溶け合いたいのだ。

「誕生日の事、本当にすまなかった…… プレゼントは、

薫の好きなものを言ってくれ…… 忘れていたおわびに何でもいい」

 忘却の彼方であった薫の誕生日について、せめてばかりの誠意を尽くそうとする皆本に、

薫は小さく微笑む。

「いいよ、もらったから」

「僕は何も上げていないが ? 」

 覚えも無い事を言われ、再び彼は首を傾げる。

 一体、何をあげたのだろうと考えるが見当がつかない。

 それを見て、薫は可笑しそうに笑いながらも、少し顔を赤らめながら--------

「誕生日の瞬間を皆本の腕の中で過ごしたかったの…… 

誰よりもあたしの近くに来て全てを受け入れてくれた人だから…… ずっとそれを待っていたんだ」

「薫…… 」

 薫の言葉で、ようやく彼女が今夜、彼の部屋に忍んできた理由を知る。

 ただ、大切な人の側で年を重ねたいという、ささやかな願いを抱いた薫に、

皆本は胸に熱さを感じながら更なる愛おしさが募る。

「16歳なんだから、一応結婚も出来るしね…… 大人になれたのが嬉しいの。

少しでも皆本に相応しくなれると思えたから」

 気恥ずかしそうに薫は笑うのだが、大人に憧れ続けてきた彼女にとっては、

16
歳という年は節目としているのだろう。

 彼にある意味、従順な子供時代とは違い、

自分の意思で行動し始めている彼女だからこそ、そう思えたのだろう。

 自分自身の足で動く事を考え始めた段階で、確かに大人へ変わりつつあるのだろう。

 変り行く薫の姿に何処か寂しさを感じてしまう皆本だったのだが、

自分に近づきたいという彼女の姿に感銘と嬉しさもあるのだ。

 ならば、それを側で支え続けようと。

 例え、それを阻む運命があると知っていても。

 薫を愛し導き支えるのが、彼に与えられた責務なのかもしれない。

「少しだけ、大人の仲間入りだけどね…… 16歳おめでとう、薫」

「ありがとう皆本…… あたしは、皆本に出会えた事が、

何よりもプレゼントだったよ。あなたに会えてよかった」

 屈託の無い満面の笑顔で、薫は笑む。

「僕こそ、君に会えて本当によかった…… 」

 出会えた事を互いに感謝しながら、再び二人はキスを交わし求め続けたのだった。

                                 終。

                                                2008.07.30




 甘々すぎる16歳薫と25歳皆本話です。
 しかも、えろねたです…ま、そこまで描写はしないので、15禁程度ですが。
 誕生日記念つーことで、書いてみましたが、なにこのべた甘は?
 どこの少女漫画?、これ(笑)
 そもそも、常に自分の脳内では皆×薫は少女漫画風味なベタで書いてますがw
 15歳程度で手を出す程度なら、私的に理性リミッター解禁のようです自分(笑)
 13〜14歳では、無理かも。
 20歳なら、遠慮なしww

 この話、書いててとても満喫しておりました。
 甘え声の薫の声が、中の人で勝手妄想にアテレコ…。素敵えろボイスで…(おいおい)
 久々にえろ書けて自己充電できたし?(いやいや、えろなのかこれ?)
 
 なには、ともあれ、薫 誕生日おめでとう!←これが一番言いたかっただけ。




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