こうなりたかったのか、こうなりたくなかったのか・・・・・・

  けれど、現実はこうなっていた。

  東日流火の陰湿な炎から開放され、新次郎の胸の中で僕は、静かによりそっている。

  仲間が石化され、余談を許さない状況なのに、全てが静かに感じられている。

  この感覚をなんと呼ぶのか、僕は知らない。

  全てに精通し、天才と呼ばれたこの僕でも分からないことだ。

  僕は僕、完璧な僕を努めていたはずなのに、新次郎の前では、全てが打ち崩されてしまった。

  何故かと、誰にも問うことはしなくても僕は分かる。 

  彼はこの星組のポーラースターであり、僕の未来でもある。

  新次郎といれば、どんな困難でも打破できるような気がしてくるのだ。

  それは彼は、絶対にあきらめないという誰よりも強い信念の持ち主だから。

  真っ直ぐで人を疑うことを知らない、純粋な存在。

  僕はそんな彼を誰よりも大切な存在だと確信している。

  傍にいるだけで得るこの信頼と、安心さと、暖かさ・・・・・・・

  そう、これは、僕が新次郎への愛おしさに違いない。

  僕は新次郎が好きなのだと断言する。

 「昴さん大丈夫ですか?なんか、俯いてるからどこか痛いんですか?」

  僕の心を知らずか、新次郎は優しい言葉をかけてくれている。

  それが、何よりも嬉しい。

  僕を心配してくれているから。

 「さっきも言ったが、計算のうちだ。怪我といっても行動に支障のきたすものではないさ」

  本当ならありがとうと言いたい、でもどうしてもいつもの僕の言葉になり言い返してしまう。

  僕こそが素直じゃない。

 「そうですか?でも少し腕から血が出ています。ちょっと待ってて下さい」

  そう言うと、新次郎はポケットから白いハンカチを取り出し、火傷を負った昴の左上腕に巻きつけ止血する。

  その行為で、僕の胸は今まで経験したことのないような、激しい胸の高鳴りを体験し、顔がが紅潮して
 いくのをはっきり感じられた。

 「余・・・・・・・」 

  思わず『余計なことを!』と口出しそうになってしまうが、必死にそれを抑えた。

  その行動を見ていた新次郎は、思わず勘違いをして、

 「あ、痛かったんですか?ごめんなさい。今すぐ、やりなおします!」

  申し訳なさそうに、彼は傷に結んだハンカチの結び目を解こうと手を伸ばす。

  慌てて僕は、その手を僕の手で止め、

 「い、いや、これでいい。大河の手当ては的確だったよ。これで戦闘に何の支障もなくなった。」

  高鳴る胸を押さえながら、僕は必死言葉を紡ぐ。

  緊張して言葉が流暢に話せない。

 「そうですか、ならよかった。もしこの先痛むようでしたら、いつでもやり直しますから」

  爽やかで屈託のない笑顔で、彼は僕に微笑んだ。

  その笑顔が更に僕の心の中で輝きをまし、思いへと変わっていく。

  そして自然と僕の顔から力が抜けていくのを感じる。

  また僕は笑っているのだ。

  ごく自然な微笑みを-------

 「やっぱり昴さんの笑顔っていいですね。僕は、昴さんの笑顔見ていると、自分でも変ですが、
安心と勇気が湧き上がってくるんですよ。僕はその笑顔が何よりも大好きです!」
 
 何の躊躇もなく、新次郎は僕の笑顔をベタ誉めしてくれている。
 
 嬉しいのだが、よくもそんなストレートに誉めてくれるのが、少し恥ずかしい。

 だがその言葉が、更に僕の心に刻み込まれ幸福感を与えてくれた。
 
 「大河・・・・・・」

 「へ、変な事を言ってすみません・・・・・・僕もなんか、変です。うまい言葉を話せないというか」

  思わずまた余計な言葉を口にしそうになるが、それよりも先に新次郎が顔を赤らめ、この雰囲気をまた勘違いして
謝ってきた。
 
 今の今まで気がつかなかったのだが、彼もまた緊張していたのだ。

 お互いを意識しすぎたというべきか。

 ただ僕には、彼が僕を意識する対象にしてくれていただけでもよかった。

 そう思うと、緊張していた体の力が一瞬にして抜け落ちる。

 今なら、僕は素直に言葉を紡ぐ事が出来る。

 真っ直ぐ、彼の目を見つめると、

 「新次郎、ありがとう・・・・・・」

 僕は小さい声ながらも、僕は確かに『ありがとう』を言った。

 『大河』と呼んでいた名を『新次郎』と呼ぶのは、呼んだ後でも少し恥ずかしい。

星組の皆は、何の気兼ねもなく彼をこう呼んでいたのだが、親しみを気づかせたくないからか、どうしても
そう呼ぶことができなかった。

 けれでも、こうして呼ぶことが出来ただけでも、少し僕は自分の気持ちに前進したのだとわかる。

 今までの僕を変え、笑顔を与えてくれた全ての思いに、『ありがとう』を言いたかったのだ。

 今の僕には、何も心戸惑わされることはない。

 心置きなく、星組を皆を助出しにいけるのだ。

 再び僕は東日流火の後を追いかけようと、彼の胸から立ち上がった。

「いくぞ大河、皆を絶対に助けだすんだ!」

「はい、行きましょう、昴さん!!」

  どこか嬉しそうな顔を浮かべつつ、この先に待ち構える強敵を倒そうとする戦意に身を包まれながら、
 彼も走り出す。

  彼の後に続き、僕のランダムスターに向かい走り出す。

 この紐育------そして、仲間、大切な新次郎との未来を護るために、僕は戦地に再び駆け出すのだった。


                                                            *END*
 

★第5話の東日流火の束縛から解放された直後の話です。
 というか、このエピソード、本編2回しかプレイしてないんで、前後の話と矛盾しているかも(おい)
 思いつきなんで、矛盾しているのは、妄想ということにしておいて下さい(おいおい)
 一応、クリア後の見られるムービーを何度も繰り返して確認しましたが(苦笑)
 ちなみに、うちの昴は、新次郎のことを心中では、常に新次郎と連呼しております(爆)
 ほのぼのラブって感じの話です。
 なんか、小説でも書こうと、何も考えずに適当に打ち込んでいたらこんな話に(おいおい)
 白紙の段階では、本当はジェミニの話でもと考えてました(爆)
 

2005.12.19 UP

★ありがとう・・・・★