『とある夜の二人』




 何故かコンビニ内にいる薫と皆本。

 二人の鼻に、何やら美味しそうな匂いが充満している。

「あ、これ美味しそう。買わない、皆本 ? 」

 レジの横にて販売されている『おでん』を指差し薫は、皆本にねだっている。

「別にこんなところで、買わなくても、家に帰ったら簡単なものでも作ってやるよ」

 あまり買い食いが好きでない皆本は、顔を渋らせて薫に答えている。

「でも今日、皆本疲れているじゃん。

それに、たまにはこういう物も食べてもいいと思うんだ。

あ、大根と、こんにゃくと、はんぺんと、卵を2つずつ下さい〜」

 皆本を気遣っているのか、無視しているのか薫は、店員に

勝手に注文を始めてしまっていた。

「まったく薫の奴は…… 」

 強引な薫を止める事も出来ずに、呆れて苦笑を浮べながら皆本は

それを夕飯にすることに決めるのだった。


 夜の公園のベンチで、二人は腰を降ろしている。

「はい、皆本」

 彼の目の前に湯気が立ち上っているはんぺんが、差し出されていた。

「あ、ありがとう」

 それを手で受け取って、まじまじと見つめている。

(既製品なわりには、よく染込んでいるな。でも、ダシも

調理も工場での大量生産の物だから、たいした味じゃなさそうだが)

 あまり関心を持たずに、彼は一口それを口にした。

 想像と裏腹に、濃厚で奥深くまで染込んだ味と、まろやかさ。

「美味い」

 思わず皆本は感嘆の声を上げる。

「美味しいでしょ ? あの系列のおでんは、味がいいんだ。


色んなコンビニを食べ歩いているけど、あそこが一番かな」

 少し自慢げに薫は、そう笑っている。

「コンビニのおでんが、こんなにいける味とは思わなかった」

 本心から絶賛している皆本を横目に、薫は笑いが止まらない。

「家で手作りで食べるのもいいけど、

こうして普段味わった事のない味を経験するのも新鮮でしょ ?


 自分もまた、熱々な蒟蒻を息で覚ましつつ食べながら、片手にはビールを持っている薫。

「そうだな、僕が知らない事が多いみたいだ。たまにコンビニに行くのもいいな、

こうやって美味しいものに出会えるから」

「でしょ ? じゃ、また今度二人で行こうよ」

「ああ」

 肩を寄せ合いながら、お互いのぬくもりと、おでんの熱さに

身を暖めあう二人であった。

                  終わっときます

                         2007.10.29


 たまにブログで、ふと思いついた話を書いているのを
 サイトの方に持ってきました。
 いや、本当に意味の無い話ばっかりですが(苦笑)
 
 ちなみに、この話は、昨日コンビニに出掛けた際に
 思いついたので、コンビニ話と化してますが(汗)

 でも、皆本は基本的に手作りにこだわるので、
 買い食いはしなそうだし、
 薫も本編で、皆本の家以外では仕出弁当や外食ばかりだったから
 本当は手作り好きだろうな。

 ま、かなりありえなそうな話ですんません。



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