初めての贈り物。
※サンデー11号ネタバレなのでご注意。
まだ、あどけなき若かりし乙女の頃 ? の不二子が、バレンタインデーに殿方に
チョコをと提唱してから数日後の蕾見邸。
そんな本日は、バレンタインデーの当日だった。
「はい、京介にこれをあげるわ」
不二子の部屋に呼び出された京介は目の前に、可愛らしい桃色の包装紙に
ラッピングされた小さな包みを不二子は差し出しだす。
「え…これ、僕にくれるの ?」
きょとんとして、これまた年端もいかない兵部京介少年。
いつも呼び出されれば、ロクな目に遭わないことを知っていることもあり、
今日もまた何をされるのか内心脅えていたのだが、そんな彼に拍子抜けの展開が舞い降りた。
「そうよ。女の子から男の子大切な思いをこめてチョコをあげる日と私が決めたのですもの。
私には京介が大切なぞ存在だから贈りたいの」
にこりと、いつもの不二子とはどこか違う柔和な表情で笑む。
初めて不二子に贈り物をもらえるということで、抱いていた警戒感をここで解いた。
この人は、そんなにいつも意地悪じゃないのだと。
「ありがとう。不二子さん、食べていい?」
「いいわよ」
京介は嬉しそうに受け取ると胸を弾ませながら早速、中身を開き、
幾つもの小粒になったチョコを一口、口に入れた。
同時に、口の中には少し苦さがある甘さが広がる。
(甘くて、美味しいや…不二子さん家にいなきゃ、
こんなに美味しいものを一生食べられなかったかもしれない)
生まれ持った能力のせいで、家族から見放された挙句、この家に引き取られ、
散々不二子に苛められている日々だったのだが、こうやって不二子の暖かく
優しい心遣いをもらえるとは思わなかった。
この家に来て、初めてよかったと胸に抱いたのだったが-------
次の瞬間、チョコの甘さの後に、いきなり痛さを感じるような猛烈な辛さが京介に襲い掛かる。
「!!!!!!!」
堪えきれない辛さに、京介は口に手を当てながら顔を紅潮させ、
慌てて口に入れていたものを吐き出そうとする。
「吐いちゃだめ、あげたものは、全部食べるのが男としてのマナーでしょ ?
折角、寒がりのあなたに特製激辛唐辛子チョコなんだから、身体が温まるでしょ ? 」
瞬間移動で京介の背後に素早く回りこんだ不二子は、彼の首を素早く羽交い絞めにしたまま、
念動力で残りのチョコを一気に口に突っ込んだ。
「んぐぐぐ!!!!!!」
更なる衝撃が京介に襲い掛かり、涙目を浮べながら手足を痙攣させ始めている。
「あら、泣けるほど美味しかったの ? なら、来年も素敵なチョコを食べさせてあげるわ。
それと、来月の14日は今日のお返しとしてホワイトデーという日も決めたから、お返しは必ず頂戴」
天使のような悪魔の笑顔で、不二子は、そうほほ笑むのだった。
「…… あの人の思いついたバレンタインデーなんて、くそくらえだ…… 」
一人自室での机の上にあるパンドラの女性組から贈られたチョコに眉間に皺を寄せながら、
京介は見つめている。
それから70年以上過ぎた現在の今、この日になると不二子のチョコを
無理矢理に食べさせられた京介はチョコとバレンタインデーの
文字を見ると当時のトラウマを思い出すらしい…。
それでも、愛するべき同胞から贈られたものでもあり、後々律儀にいただいたという。
でも内心、薫からのチョコならば、諸手で歓迎だとは誰にも言えない本音だったりもする。
初めての(恐ろしい)贈り物(笑) 終。
2008・2・13
加筆修正 2/14/08
今回もある意味脱線して、兵部と不二子さん子供時代ネタです。
サプリメント読んだら、こんなかなりベタすぎますが、こないな話が(苦笑)
しかも、兵部を苛める不二子さん極悪っぷりが書けて楽し。
これ実際は、ブログの方で、殴り書きした話です。
結構長さがあったので、こちらに転載しました。
ま、まあ、馬鹿話なんですが。
それでも、初めて兵部と不二子さんのカプ話が書けて至福です。
・・・一部、兵薫に触れそうな一文もあるけど、とりあえずここは不兵で(苦笑)
お子様時代ネタと戦時中の思春期時代の2人の話は、絶対に書きたいですわ。(時期未定)
しかしまあ…… 本来、三人娘と皆本(少し薫びいき)で、バレンタインネタを書こうと思いましたが、
本誌とモロネタ被ったので、没に。
なので、この二人で衝動的に書いてみました。
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