一線

「薫! 」

 皆本の怒声が、血飛沫に赤く染まった薫に浴びせかけられる。

「皆本…… あたし…… 」

 動揺に包まれている薫の足元には、血飛沫の元である今はもう肉片と化した

屍が転がっていた。

「あたし…… 人を殺してしまった―――― 」

 後悔と自分のしでかした事に恐れた薫は、搾り出すような声で皆本にそう告げた。

 赤石薫18歳 ――― これが、彼女がESPで人を殺めてしまった始まりの一端であり、

破壊(クイーン)(・オブ)女王(カタストロフィー)と呼ばれる人生の序章であった。

「薫 ! なんてことを…… と、とにかくここから離れよう」

 皆本は、動揺したまま顔を強張らせ、うろたえている薫を抱きしめ、お姫様抱っこの

体勢に抱き上げると足早に自分の車に乗り込み、その場を去った。

「とりあえず、シャワーを浴びろ。その格好では、落ち着く事も出来ないだろうから、

後の事は、なんとか僕が始末の手配をしておく」

 連れて来た先は、皆本の自宅でも無く今、薫や、葵、紫穂が住んでいるマンションではなく、

内密な仕事上で時々使用するために借りたマンションだった。

彼は薫を半ば強引の脱衣所に押し込むと、自分はあの現場の処理のために、内密でバベルの中でも、

信頼のある存在達に遺体処理と、事件自体の隠蔽を依頼の電話をする。

 ひとまず、今出きるだけの処理が終わると、側にあったソファーに崩れこむように、

座り込む。

(薫が人を殺めてしまった――― 何故、こんなことに------- )

皆本は右手で顔を隠すように覆うと、呟きながら重く深いため息を吐く。

それは、意外と単純なことだった。

最近は、単独任務の多い薫は、反エスパー排斥団体『普通の人々』の罠に引っかかり、元来、気が強く正義感の強く、

あわよくば単純な薫は思わず念動(サイコ)能力(キノ)で、人の命を奪う結果をもたらしてしまった。

恐らく、かの団体はこの事をどこかで記録しており、エスパーとノーマルの確執が大きくなり始めている今、

この事実を公表して、人々の心理を煽り、更なるエスパーの排除と殲滅を訴えるつもりなのだろうと。

この事件を既に予知で知っていた皆本が、回避させようと駆けつけたのだが既に手遅れとなっていた。

しかし、事件を表に出さないように、現場で隠れていた団体の撮影しておいた映像は全て奪い拘束した。

しかしそれでも、今回の映像はともかく、事件の事は瞬く間に彼らに知られ、

一般市民にまで広まってしまうだろうとは、予測されることだろう。

それもまた2年後に訪れてしまうだろう、予知の未来の一端であるのだと皆本は分かっていたのだ。

8年前に予知されて以来、皆本は予知が現実にならないために、常に奔走していたのだが。

しかし、その思いとは裏腹に、残酷にもあの予知は現実味を帯びているこの頃。

そして今日の事件。

皆本は、この8年自分のしてきたことは、なんだったのかと、途方もない無力感に囚われていた。

「皆本…… 」

 シャワーを終えたらしく、皆本が用意しておいた彼のYシャツを羽織って薫が、目の前に立っていた。

さすがに大きすぎたらしく、ぶかぶかであるがシャツだけを羽織っている姿は、

普通の男だったら状況に関係なく目のやり所に困るだろう。

しかし、そんな不埒なことを考えてしまう余裕は今の皆本には無い。

けれども少しは意識は持っていたのだが。

数年前は、本当に子供だった彼女が、今では成長を果たし、男達を魅了するほどに、心身の成長を果たしていた。

「薫…… 」

皆本は立ち上がると、彼女を座らせ自分は台所に向かい、お湯を沸かすとインスタントではあるが、

コーヒーを二人分淹れて薫にカップで手渡す。

「胃の中に何か温かいものが入れたほうがいい。落ち着くから」

「うん…… ありがとう」

 素直にカップを受け取り、薫は一口、口に含む。

 同時に口内に、ほんのりとした香ばしい香りと、苦味が広がる。

「苦い…… 皆本、クリープと、砂糖入ってないじゃん」

 自分の好みじゃなくて、文句をつける薫に皆本は少し、安心した微笑を浮かべる。

「生憎、ここには置いてないんだ。僕しか使用しない部屋だからね、我慢してくれ」

「皆本しか使わない部屋―― アタシ達が知らないうちに、こんな部屋借りてたんだ」

「仕事上…… な。どうしてもあっちでは、お前と葵や、紫穂が頻繁に来るから出来ないこともあるんだ」

少し申し訳なさそうな表情で、皆本もコーヒーを口にした。

「アタシ達に教えれない仕事ばかりって…… エスパーとノーマルとの対立の問題の事でしょう。

知ってるんだよ、皆本…… 耳にさせたくないと思ってくれてたんだと思うけど、

今ではアタシ達でもそれなりに今の状況を知る術はあるから。もう対立は避けられないだろうと分かるし、

いずれ戦いになってしまうと思う。昔、京介が言っていた事が、今になってよく分かってきたんだ。

アタシはBABELにではなく、PANDORAにいた方が良かった気がしてたまらない。

そうしたら、今日のように人を殺めてしまうことに動揺することもなかったのかもしれない」

薫の持ったカップの中のコーヒーの水面に、波紋が立つ。

彼女の涙が、カップに流れ落ちる。

バシーン

薫の右頬が、赤く染まる。皆本が彼女の頬を叩いたのだ。

「何を言っているんだ薫 ! いくら人を殺めてしまったからと言って、そんな事を口にするなんて ! 

アイツの言う事など鵜呑みにするんじゃない ! あいつらは、ノーマルを憎み、

混乱させようとしているだけのテロ団体だ ! 確かに今回のことは、今の僕にもかき消すことも出来ないことは事実だ。

しかし、今回の事を重く反省して、もう二度と同じ過ちを起こさないようにすればいいんだ ! 」

兵部の名を口にされ、嫉妬に近い思いを抱いた皆本は、叱咤にも近い声で、薫を叱りつける。

それは更に薫の心の傷を抉る結果をもたらすことにしかならないのに。

「本当に昔から何も変わっていないんだね、皆本は…… アタシはただ普通に人を殺めたんじゃない、

念動(サイコ)能力(キノ)で殺したんだ。ノーマルからは、この力を持っていたからこそ、殺してしまったんだと、

あいつらは自分達とは違った畏怖たる存在なんだと思っているんだよ ! 」

 声を震わせながら、皆本の瞳を強く見つめ激しく訴える。

「そんなことなんかない ! エスパーを恐れ嫌うのは、一部のコンプレックスを抱いている存在だけだ。

薫が人を殺めてしまった理由を知れば、理解してくれるノーマルの人間だっている。僕のように――― 」

「何も分かっていない。所詮皆本もノーマルなんだ。この痛みと気持ちはエスパーでないと分からない ! 

常人とは違う力を持った事がないから――― そんな簡単に解決できるようなことを言えるんだよ !! 」

 二人の激しくすれ違う言葉を示すように、薫の手にしたカップが小刻みに震えている。

 心の底から搾り出すかのような、辛い本音の言葉を聞くと、皆本は何も答える事が出来ない。

同じ立場になれない彼には、確かにその辛さが分かることが出来なかった。

(なんで、俺は薫を慰める言葉が言えないんだ…… 俺も同じ能力者でさえあれば、

薫をこんなに苦しめる事はしなくてすむのに――― いや、それはただの言い訳でしかない)

 自分の無力さが歯がゆく、唇の端を強くかみ締めながら自分への怒りを表す。

「確かに薫の苦しみを俺は理解してやれることは出来ない。僕が君と同じ立場に決してなれないのは確かだから――― 

だからと言って、このまま冷たく突き放すなんてことは出来ない。この十年間共に過ごしてきたからこそ、

何をしても救ってやりたいんだ !! 絶対に解決できる方法があるはずなんだ !!」

 解決できる方法など宛もないのだが、ここでは出任せを言ってでも薫の気持ちを掴み取っておかなくてはいけないお、

必死に彼は説得するのだが、

「皆本の気持ちは嬉しいよ…… でもそれを実現出来るような力が皆本に無い事も知っている。

理想論だけでは、何も変えることは出来ないんだよ」

 皆本の言葉も虚しく、既に自分の考えを持つ薫の沈んだ心を救い上げることが出来なかった。

 何も言葉が続かない重い空気が、長い間そこに広がり居た堪れなくなった薫は、

「あたし…… もう行くよ…… 」

「どこに行く気だ、薫っ !! 」

 長い沈黙の後、手にしていたカップを側にあったテーブルに置くと、皆本に背を俯いたまま、

まだ乾燥しきれていない自分の服を手に取り、部屋から飛び出そうとした瞬間、

その薫の腕を反射的に皆本は掴む。

「離して皆本------- ここにいても、何の意味がないんだよ。あたしは、

あたしの生きていくべき場所に行きたいんだ-------  あそこでなら、もう悩まないで済むんだから」

 それは兵部の率いるパンドラに行く事を示していた。

(薫を兵部の元だけには、行かせるわけにいかない------- このまま行かせなどしたら、

あの予知未来が更に現実に近づいてしまう…… 僕の手で薫を------ 

  皆本の中で激しい葛藤が湧き上がり、自らの手で薫を撃ってしまう悪夢の光景が再び思い出された。

 絶対に、あのような結末を迎えさせるわけにはいかない。

 薫の迎える未来は、決して血に染まったものには仕方はないのだと、彼の中で激しい焦りが湧き上がる。

 そして、何としても薫を止めようとした手段が、悲しくもこれしか思いつかなかった。

「駄目だ、薫っ------ !! 」

 薫の手を離すところか、皆本は自分に引き寄せると、そのまま薫を床に押し倒し、その上に自分が乗りかかる。

「皆本っ、何を !?」

 自分自身に何が起こったのか理解しきれていない薫は、甲高い声を上げて叫ぶ。

 しかし、皆本は無言で上に覆い重なり、自分の空いている手足で薫の手足の自由を奪うと、

首筋に吐息を投げかけながら肌の潤いのある首に唇を這わせ始める。

 彼の取ったその行為が、何を示すのか薫はすぐに理解する。

 皆本の瞳を怯えながら見つめる薫には、自分を保護者として見ていたものではなく、

異性として------ 女として見ている目であった。

 このような視線を見るのは、薫にとっては初めてであったが、

皆本は時折その視線を無意識に向けていたのだが、薫は気付かなかった。

「や、やだ ! 止めて皆本 ! こんなの嫌だっ !! 」

 手足で側にあったテーブルを蹴倒し、上にあるものを転倒させるほどの抵抗を起こす。

 皆本との関係を、密かに望んで儚く胸に抱いていた薫だったが、

皆本が薫には興味を持っていないような態度をしていたこともあり、薫には望み薄な想いだったのに、

いきなり薫を求める態度への豹変に、何故今なのかと激しく動揺を隠せずに、

ただ押さえつけられている身体の拘束から抜け出そうと全力で必死に抗うのだったが所詮、女の力では無力であった。

 その間にも、彼はシャツのボタンをちぎるように外し、露わになった豊かで艶のある双丘に手で触れ顔を埋めながら、

更に唇を這わせながら、舌で這わしながら愛撫を続ける。

 今まで感じたことのない得体もしれない感覚に襲われるのだが、反面恐ろしさと切なさもが同時でもあった。

 今は、後者の方の思いのほうが強い。

 ただこのまま勝手に自分の身体を陵辱されたくは無いと。

 肉体の力で適わないのなら、リミッター制御されてはいるが念動(サイコ)能力(キノ)でならば、

彼を部屋の外に吹っ飛ばすことくらいは容易かった。

 しかし、それだけは薫にはどうしても出来ない。

 何故という疑問を抱く思いとは別に、自分の本能で皆本を拒む事が出来ない理由を理解していたのだ。

 自分を求め襲い掛かっている皆本の切なく辛そうな表情を浮かべているのを目前にして、薫は抗うのを止める。

 本当はこんな乱暴な事はしたくないのだと、その目は答えていた。

 ただ、薫を失いたくないという残酷で純粋な彼の心を拒否することが出来ない。

 それが、更にお互いの関係に大きな溝を作り上げるだろうと分かりながら------。

 薫の頬に、一筋の涙が伝わり床に落ちる。

 その涙の意味さえ今の皆本には伝わることなく、ふいに力を抜いた薫が自分への抵抗を止め受け入れて

くれたのだと安心したかのように微笑むと行為を続けた。

「痛っ…… 」

 あれからどれほどの時間が経ったのだろうか、外はまだ雨が降っているらしく窓に当たる雨の音が薫の耳元に聞こえていた。

 目の前には、皆本の顔が間近にあり、真っ直ぐ彼は薫を胸に抱いたまま、あれからこの状態でいる。

 薫は眠ることなど到底出来るような状況でもなかったため、行為の間から今まで複雑な気持ちを抱かえ胸の中で黙り込んでいた。

 皆本が目を背けることなく自分を見つめたままでいるため、どこか気まずいのか薫は顔と身体を背けたと同時に、

下腹部に鈍痛が走り、思わず顔を苦痛で歪ませる。

 痛みで今、自分の置かれている状態を再確認することとなる。

 皆本に抱かれたことが、夢ではなく今ここにある現実なのだと。

 皆本を受け入れ身を委ねた薫が知ったのは、今まで垣間見ることのなかった皆本の姿。

 今までは父親のような、保護者のような立場にいた彼によって抱かれ女になったことを実感させられていた。

 一見華奢な体格をしていそうな皆本だったが、その外見とは裏腹に実際はかなり引き締まった裸体を薫の前にさらけ出し、

その腕で激しく求められ抱かれた時の事を思い出すと、何を言ったらいいのか分からない。

 しかし、その時の感覚は未だに鮮明に記憶にも、身体にも色濃く残っている。

 得も知れない快楽という感覚に、普段の自分では出すことのないような、

淫靡な声を漏らしながら皆本に甘え求めていた。

 それに答えるかのように全身に数多の愛撫の赤痣を記され、互いの鼓動を間近に感じさせながら、

自分の中に皆本を迎え入れた時の事------- 

 子供の頃から、この手の本や映像を楽しんで見ていたものの、実際に自分で経験したのでは、

全然違うものだと身を持って知ることにもなった。

 けれどもそれは、知識として知っているような快楽などとは違い苦痛なものだったのだが。

 身よりも、心に負わされた傷の痛みの方が、数倍にも痛い。

 本当なら、結ばれたという苦痛でさえ嬉しさを感じさせてくれるのだろうが、今の状況では、到底そう思えはしない。

 ただ、皆本と関係を持ってしまった今でも…… 結局、何も問題は解決していないのだと分かっていたから、

そう感じるのだろうと薫は分かっている。

 おしらく皆本には、薫を自分のものにしてしまえば、揺れている感情が自分の方を向き、

薫を救うのは自分なのだと分からせ信頼させて、同じ立場だから薫の気持ちが分かると、

甘い言葉で誘い続ける兵部の元に向かうことはないという考えがあるのだろうと。

 しかし、頭脳明晰な知能を持つ彼にしては、甘く浅はかな考えだと知りながらも、

薫は皆本を拒絶することが出来なかったのも事実だった。

 薫の中でも皆本に対する甘えと、この現実から逃れたい思いがあったのを痛いほどに、実感していた。

 そう思うだけで、胸が抉られるように痛む。

 もう戻れない一線を越えてしまったのだと。

 深い罪悪感を抱きながら-------

「薫…… 大丈夫か ? 」

 薫の行動が気になったのか、背いた顔を覗き込むように、様子を伺う。

「別に、たいしたことはないよ 」

 顔を直視できず俯いたまま、低く重い声で言葉を返す。

 とても顔を直視できるはずもないのだから、仕方は無い。

 気恥ずかしさと、困惑に動揺を隠し切れないのだ。

「すまなかった…… なんというか、強引に近い形で、こんなことになってしまって……

 少し歯切れの悪い声で、皆本は謝罪をする。

 しかしその言葉に、薫は返事を返さず沈黙を続ける。

 冷静になった今、先ほどまで薫に対しての行為は、彼でも強引だと分かってはいた。

 反抗し続けたまま抱いていたのなら、最早犯罪の域になっていた。

 しかし、あの時ああでもしなければ、確実に薫は彼の制止を振り切り去ってしまっただろう。

後悔と懺悔の念が彼を重く沈ませる。

 だが、それによって薫を手元に引き残せたということも確かだが。

 十歳の頃から保護者的立場で接してきたつもりだが、今日のような日が来るとは未来予知で先に知っていたとはいえ、

複雑と戸惑いは今もある。

 ただ子供だった薫が、いつしか異性として彼の目に映り始めていたのも事実だった。

 保護者という枷を持つことで、恋愛感情を持たないようにと常に勤めていたのだが、

自分でも気付かない本心では愛しさが募りあがっており、今回のことが押さえ込んでいた感情を抑えることが出来なくなり、

感情のままに行動してしまっていた。

 腕の中で一糸纏わない姿で横たわっている薫を愛おしく眺めながら、

その視点を下に向けると白く華奢な大腿部の内側を白濁液の中に、紅の流れが目に映る。

 それは薫の純潔を失い奪った証でもあり、彼以外の誰にも奪われていない証でもある。

 それを自分が奪い取り手にした高揚感と満足感を感じつつ、若き弾力のある薫の中締め付けられた快楽の中で、

自分を放ち果てた跡もまたそこにはあるのを彼は目にしている。

 あわよくば薫が孕んでもよいという考えすら彼の中であり、

そうすれば自分の手元から手放さずにいられるという私欲に満ちた考えが湧き上がっていた。

 それを薫が卑怯だと侮蔑しても、構わないという覚悟すら持っている。

 そうでもしても、手放したくは無い。

 現に薫は当初は反抗したものの、自分を迎え入れてくれたことが、何よりも答えだと思い込んだままで。

 薫の本心を知ることもせずに。

 しかし、そんな皆本でも一抹の不安は未だに消えていない。

本当に、このまま薫が自分の側に今まで通りにいてくれるのかと。

 それを考えるだけで、再び不安に襲われると再び薫の身体抱きしめた。

「今の世界が薫や他のエスパー達にとって、安住できない状態なのは分かっている。

一触即発に近い険悪さえ感じているのに------ だが僕は君だけは、これから起こるだろう戦禍に巻き込ませたくはない、

今の力なら確実に、PANDORAでも、頭角を現す位置に来るだろう。僕は、あの組織の考えに懐柔する気も、

認めることも出来ない。話し合い

でノーマルとの融和が出来ないからと、超能力で相手を屈服させる卑屈な考えが許せない。

エスパーにとって、そここそ安住の場と思う連中は多い。しかし、あれはただのテロリスト集団でしかないんだ。

そんな中に君を行かせなどしない。例え、全てのノーマルやエスパーが君の命を狙おうが、

奴らから僕は絶対に薫を全てから守る。君にも全てに立ち向かう強さを持って欲しい、ずっと僕が隣にいるから、

僕には、薫が必要なんだ。側にいてくれ薫------ 」

 物欲しがる子供のような顔で、皆本は薫に請うように頼み込む。

「皆本…… 」

 悲痛なほどのその言葉は、薫の胸を強く揺さぶる。

 本当に彼は自分のことを大切と思い、守ろうとしてくれていることを。

 それが、全てを敵にまわしても------ 本気で、皆本はそう思っている。

 自分のためならば、自分の手を汚してまでもそうするのだと。

 それは、彼自身の築いてきた全てを壊してしまう。

 つまらない自分のために、ここまで築いてきたというのに。

 皆本の言葉を飲んで、彼の隣にいることを一瞬思い抱いてしまったのだが、それは出来ないと薫は自ら否定した。

 自分の幸福のために、他の事を犠牲にすることは出来ない。

 薫を含め、今の状況でエスパーの大多数がパンドラへと帰属している。

 その気持ちが痛いほど分かる。

 今までエスパーが受けてきた傷を知っているからこそ、他の皆よりも強いこの力を持つ自分が彼らを救い

手助けしていかなくてはいけない。

 彼らを裏切るような事は出来ないのだと、薫の遺伝子がそう伝えていた。

『愛する人よりも、仲間を選ぶ』

 それは、薫が決めた答えでもあった。

「ごめん…… 皆本の言葉は凄く嬉しい。…… でも、それだけはあたしには出来ない。

本当の事をいえば、あたしはエスパーの仲間の方を守って助けたいことを望んでいるから。

皆本の事が好きでもこれだけは、曲げられない。今の対立を止めるようなことは出来ない、

あたしはあえて対立を望む。これが、あたしを含めたエスパーの総意だと思う」

「薫っ、そんなことを言う……  ?! 身体が------- 何を ?! 」

 慌てて皆本も起き上がろうとしたのだが、薫の指先が皆本の額に軽く当たった瞬間、

脳に強い衝撃が走り途端に身体が鉛のように重くなると動けなくなり、意識が霞み始める。

「少し脳と頚椎に軽い衝撃を与えただけ、半日もすれば目が醒めて動けるようになるよ。こうでもしなければ

あたしはここから出る事が出来ないから…… ごめん」

 目尻に涙をため、次第に涙声で謝る。

「い、行くな、薫…… 行かないでくれ !! 」

 動かない右腕を必死に動かそうとするのだが、その甲斐虚しく僅かにしか動かすことが出来ずに薫を止める事など出来なかった。

 そんな必死な皆本の姿を正視することが、辛くて薫は顔を背けたくなる。

 決めた覚悟が、揺らぎそうになるほどに心を揺さぶる。

 けれど、今ある現状から逃げる事は出来ないのだと薫はあえて向きなおす。

 全ての問題に立ち向かうために------ 自分がもう何があろうと、揺らぐ事の無い強さを得るために、

この場の迷いを乗り越える事が出来なければ、この先に進めないことが薫には分かっている。

 静かに儚げな微笑を浮かべながら薫は、横に首を振り------

「昔、皆本が言ってたよね、『好きだけど別れてしまうこともある』って、

あの頃は本当に子供で意味が分からなかったけど、今ならよく分かるよ。今のあたしは、

皆本と生きることよりも皆本達と戦うことを選ぶ。小さな頃から我が儘ばかり言って、謝りきれないけど本当にごめん」

 謝りながら薫は、身動きできない皆本の唇に自分を重ね、すぐに離す。

「一度でいいから皆本とキスしたかったんだ。小さい頃からの夢を叶えることが出来たよ。

あたしはもう行くよ…… さよなら、皆本------- もう出会わない事を願うよ。もし出会ったらお互い敵同士だと思うから------  

その時、あたしは躊躇しないと思うから------ 」

 頬に涙を幾筋も伝わせながら薫は、覚悟を決めた眼で皆本に別れを告げた。

「か、薫…… 駄目だ……」

 必死に引きとめようとしている皆本の頬にも同じように涙が伝う。

 これは悔し涙なのか、それとも薫を引き止めることの出来ない不甲斐無さを恨んでなのか------ 

そんな切なる思いを胸に抱いたまま、皆本の意識は白濁し消えた。

 薫はそんな皆本の顔を見て名残り惜しそうな顔を一瞬したかと思うと、思いを振り切るかのように踵を返すと、その場を後にした。

 深夜を過ぎたというのに、未だに雨は降り続けている。

 そんな暗闇の雨の虚空を薫は飛んでいる。

 全身を雨で濡らしながら空を駆る中、身も心も無言で泣き叫んでいた。

 幼い頃から抱いて来た思いへの終止符を打ったことに。

 

そんな薫の進行方向に、複数の人影が出現し、薫は思わず足を止めて涙を拭う。

「覚悟を決められたようですね。なら我々の元にいらっしゃるということに依存はないということですね」

 人影の一人の言葉に、薫は無言で頭を縦に振る。

「では、我々も貴女を歓迎いたします。「女王(クイーン)」、全てのエスパー達の未来のため、共に戦いましょう------- 」

 その言葉を受け入れた薫は、人影の人物達と共に漆黒の闇に姿を消す。

 この事件の直後、紫穂と葵もまた薫の意思に賛同するように、BABELを抜けPANDORAに帰属することになる。

 残された皆本は、しばらくの間失意に打ちふさがれるのだが、やがて彼もまた自分の中で覚悟を決め、

薫たちと対峙することになる。

 そしてあの予知された未来の日が訪れる------

 

 

BAD END風に終了(汗)

えろう、悲劇で救いようのない内容ですんませんorg

もしも未来が替えられなかったら、悲劇ENDでエロ話(爆)

基本的にエロを中心に考えていた話が、なにやらヘタレ皆本な話に(汗)

しかも比較的、エロは抑え目にしてしまいましたしー。

本当は,皆本が無理やりに薫を押し倒して犯ってしまう、ただの鬼畜エロい話だったのに、こんな話に(汗)

多分、自己的にセーブしてしまったら、エロなのに、どこか少女漫画チックな話。(昔の)

後、結構原作設定無視というか、変更してしまっていますのは、二次創作ということで(おい)

原作設定忠実の話は、結構難しいですんで(汗)

・原作設定的な予測なら、おっそらく、薫は皆本に告白しないまま、PANDORAに行ってると思いますし

(紫穂&葵と一緒に抜けたんだと思いますし(予想))

・皆本が強引すぎ、頭悪すぎ。(こりゃ、書き手が悪し(苦笑)抱いて相手を引き止めれるわけないでしょうが(汗)

・皆本のYシャツ姿の薫・・・・これを書かなくちゃ、自分が萌えん(爆)

・自分設定では、兵部はこの時代にはいません。

(原作でも、多分そんな感じですし)遺言で薫をボスに指名していたのでは?

ちなみに、昨年出した皆×薫本の大人話の設定と、最初はリンクしてましたが、

最近の本誌での描写などで微妙に会わなくなってしまいました(苦笑)

でも、予知未来の二人の悲劇っぷりな設定の話は、まだあるので時間を見て書けたらよいと思います。

ちなみに、エロじゃないです(爆)




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