『眠り姫』

　とある昼下がり、BABEL内の一室に皆本が入ると、

横にロングソファーを囲むように、紫穂と葵が立っていた。

　その向こうには、薫が眠り込んでいる。

「ほら薫、皆本はんが来たのだから、起きて　！　」

「う……　ん」

　薫の身体を強めに揺れ動かしても、

ソファーで熟睡している薫は寝言らしき事を言うだけで起きる気配は無い。

「薫の奴、こんな所で寝ているのか　？　仕方ない奴だな。

これから、ミーティングがあると言っておいたのに」

　目を覚まさない薫を呆れながら皆本は、見つめる。

「相当疲れているんじゃないのかしら、薫ちゃん。誰かさんが、

お盛すぎて昨日も随分無理させたみたいだから」

　冷たい視線を紫穂は皆本に向ける。

「え、えーと」

　疲れさせた理由を見抜かれて、皆本は紫穂から視線を逸らす。

　ほぼ朝まで、薫を寝かさなかったのは事実だった。

　かと言って、薫をこのまま寝かしておけば、目の前にいる二人に示しが付かないのも確か。

　体面のためにと、ここは厳しく薫を起こす事にする。

「僕が起こすよ」

「出来るの　？　薫ちゃん、相当起きないわよ」

「なんとかして起こすさ」

「こら薫、いい加減に起きろ　！　」

「う〜ん、むにゃ……　」

　先ほどの葵の時のように、ソファーに足を乗せながら強く肩を揺らして起こそうとするのだが、

やはり起きない。

　よほどの深い眠りについているのか。

　それでもなんとか皆本は、起こそうと薫の耳元に大声で呼び起こそうとして顔に近づいた時だった。

「皆本ぉ……　」

「え、おい、薫っ　？！　」

『あっ　！！　』

　甘たるい寝言を薫は話したかと思うと、

薫の顔の直前にいた皆本の首に寝ぼけた薫は素早く両手を回すと、

強く引き寄せながら皆本の唇に自分の物を重ねキスをしてしまう。
　
　突然の事に、さすがに皆本も驚き薫を引き離そうとするのだが、

相当強い力なのか出来ないままである。

　更に薫は皆本の中に自分の舌までも滑り込ませて、彼のものに絡めつけてくる始末。

　その感触が何とも言えないものすぎて、皆本は引き離れるのに躊躇してしまうほど。

「ん……　ん、んっ……　」

　口内で広がる粘着質の音と、薫の息遣いが皆本の耳元に流れ込む。

　しかし、今はこんな事をしていてはいけないと思うのだが、

誘惑と薫の感触に負けて、次第と自分の周囲の状況が見えなくなり始めて、

結局、自らも薫の中で絡め始めてしまうのだった。

　二人の唾液が繋がりながらも、唇を離した皆本が今度は薫の首元を攻め立て始める。

「あんっ……　」

　甲高い嬌声を上げ、薫は身体を震わせる。

　そんな仕草が、彼には更なる高揚感を感じさせられているのだ。

　首元から、鎖骨へと滑らかすように舌を這わせていたときだった。

　一発の銃声が、彼の耳に入り込む。

「そこまでにしておきなさいよ。皆本さん」

　天井に空砲を撃ちながら、どうみても造り笑顔と、青筋を浮べつつ、

紫穂が皆本を現実の世界に引き戻す。

　それは同時に、薫もまた引き戻されるかのように目を覚ます。

「ふ、二人とも、うちらのいる前で、よ、よくそんなことをー　不潔っ〜！！　」

　顔を赤面させ顔を手で塞ぎながらも、葵は指先で二人の光景を見つめている。

「そ、そんなつもりではなかったんだ　！　」

　慌てて、覆い重なっていた薫から離れると、皆本は弁解をするのだが、

そんなもの誰も聞いてはいない。

「そんなつもりは無い　？　それにしては、手は素早いみたいね。

あっという間に、薫ちゃんを脱がしているなんて」

「えっ　？　」

　寝起きで、周囲の状況が把握出来ていなかった薫は、

今頃になって自分のいる状況に気付く。

　知らないうちに、着ていたブラウスのボタンは全て外され、

なおかつブラの金具さえも外されていることに気がつく。

　そして皆本を求めていた夢を見ていたつもりが、それが現実であったことを知る。

「キャーーーーーー　！！　」

　思わず薫は、顔を真っ赤に染め上げ悲鳴を上げると、片手で、

はだけている胸元を隠し、もう一つの手で、

まだソファーの上にいたままの皆本を念動力で思いっきり壁に叩きつける。

　二人でいる時は、こんな事で悲鳴など上げたりはしないものだが、公衆の面前でしかも、

紫穂と葵の前で晒してしまったことの、照れと羞恥心だった。

「な、なんでこんなことに……　」

　薫を起こすつもりだったのに、壁に埋め込まれる羽目になり、皆本は重い嘆息をつく。

　それを人は、それが男の本性なのだと口を揃えて言うだろう。

　元を辿れば薫が誘ってきたのだが、それを抑えることが出来なかったという非もあるのは確かだ。

　そしてよりによって、紫穂と葵の目前で見せ付けてしまったのが、一番の問題でもある。

「いい感じに写っているじゃない、葵ちゃん」

「そやろ　？　決定的瞬間や　！　」

　葵の携帯で、薫と皆本の絡み合っている瞬間をいつの間にか激写していた動画を眺めあいながら、

二人は笑い声をあげている。

「お、お願いだから、それだけは削除してくれ　！！　」

「紫穂、葵　！　私からも、お願い　！！　」

　必死に頭を下げて懇願する皆本と薫だったが、二人は全く聞く耳を持たずに無視しているだけ。

　その後、その画像でしばらく紫穂と葵に断りきれない我がままを言われ続ける皆本と薫であった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　終わらせていただきます（苦笑）

◆…止めてやれよ、二人とも（苦笑）

　40号薫妄想ネタ大人バージョンで書いてみました。

　基本的に、馬鹿ップルでお馬鹿ネタなので、特に言いたいことはないですｗ

　特にエロ展開は無いですけど、表には置くのもどうかと思い、裏設置です。

　ちなみに、この続きの紫穂×薫ネタありますけど、これまた裏行きですねｗ

　馬鹿ネタですけど、折りを見て書こうかと。

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