『咎。』
サンデー39号のネタバレ要素だらけなので、ご注意ください。
しかも相当、捏造話です。
深夜を過ぎたBABEL医療研究科内の病室の部屋に薫は横たわっていた。
その傍らで、深く考え込む皆本の姿がある。
何故、薫が病室にいるといえば、日中……
黒の幽霊との戦闘の際に「ザ・チルドレン」の奥の手も言える
『ブースト機能』を使用した為、
紫穂と葵の能力を吸収して一つの膨大なエネルギーの濃縮の核となった薫に
多大な副作用ともいえる酷い疲労と、一時的なESP能力の喪失が襲う。
今回はその作用が大きく働いた為に、
薫の身体に異常は無いのか検査を含めて今夜はここに泊まる事になったのだ。
責任を感じた皆本もまた、同じように今日はBABEL内で宿泊する事を望み、
今は眠っている薫の元に様子を見に来ている。
戦闘時で高レベルの能力者だからとはいえ、
まだ子供である薫にこのような羽目に合わせている現在の境遇に自分でも胸が痛む。
それを分かっていながらも、こうでもしなければ世間から
疎まれかねない彼女達の能力を役立て認めてもらう方法は無い。
だからこそと思い開発した『ブースト機能』だったのだが、それが今の彼には腹立たしい。
大きな負担をかけてしまったのだから、薫の超能力中枢の負担もかなりのものだろう。
まだそれは、予め予想できている範疇だったのだが、彼が思い悩む原因は他にある。
この『ブースト機能』により薫の超能力中枢に予想以上の刺激と負担があったのか、
合成能力とも言える新たな能力が発現してしまったことだった。
彼の脳裏に今なお強く印象深く刻まれいるのは、
薫の背に不可視ではなく視覚でも確認出来るほどの
高濃度のエネルギーで構成されているだろう翼-------
それが彼には、助けを求めている者を守り救う癒しの翼にも感じられていた。
おそらくこれは、薫の本能ともいえる弱者を助けようとする
正義感も影響しているのだろうと、彼は分析している。
ここまでは、まだよかった。
その場に共にいた兵部の言葉が深く胸に突き刺さる。
『エスパーを束ねて、それを守る------
それが、彼女の真の姿さ。
-----彼女こそエスパーの救世主なのさ。
そしてノーマルの君が、その誕生に手を貸しているんだ。』
嫌味で彼を常に翻弄する兵部の言う事など、耳にも入れたくないのだが、今回ばかりは、
その通りなのかもしれないのだとも薄々感じていた。
ブーストを使用しているとはいえ、エスパーの能力を吸い取り、
それを束ね新たな強大な能力を生み出す。
それは、側にいる能力者と薫のその時の感情により多種多様な能力が生み出される可能性を秘めている。
そんな能力など彼には、過去に事例すらない。
無限にあるといわれる合成能力の中でも極めて異質であるが
、同胞であるエスパーには大きな存在にあるだろう。
それよりも彼が一番衝撃を受けているのは、自らが作り上げたシステムにより、
薫の本質を覚醒されてしまった事-------
元々強い正義感を持つ薫だからこそ、不遇な立場で助けを求めている
同胞を何としても救いたいという気質こそが、
『破壊の女王』たる由縁だとも兵部から伝わって来ていた。
その能力で彼らを救わることを同胞たるエスパー達が望むなら、薫は何も言わずにそうするだろう。
薫は、そんな子なのだから。
新たな能力を目覚めさせ、女王としての意識させも持たせてしまったのは、
全て自分の今まで薫と自分が迎えてしまうかもしれないあの予知された
未来の結末を回避させるためにしてきた事だったのに、
それが全て無駄足のように未来は変わることなく、女王としての道を今、歩き出そうとしているのだ。
「一体、僕のしてきた事は何だったんだ…… あの子達を救いたいだけだったのに。
僕が女王としての薫を作り上げているのか…… そんな、馬鹿な…… 皮肉すぎる。こんな事は-------- 」
皮肉さを噛み締めながら、皆本はぶつけようのない思いを自分の中で堪えていた。
「皆本 ? 」
目が覚めたらしく薫は、側に皆本がいることに気がつくと起き上がろうとする。
「よせ、寝ていろ。今の薫は、疲労が激しいはずだろう ? 無理はするな」
起き上がろうとする薫を止めながら、精一杯普通に接する。
流石に薫も、本当は起き上がるのが相当億劫だったらしく、
大人しく皆本の言葉どおりそのままの状態にいることにした。
「無理させてすまなかったな…… 」
謝るように皆本は、薫の額を撫でる。
「そんなことないよ。あたしは仲間を救う事が出来てよかったんだから……
皆本が、いいと言ってくれなかったら、多分助けられなかった。ありがと…… 信じてくれて」
感謝しながらも、少し照れながら薫は皆本に礼を言う。
「君の仲間を絶対に救い出したいという強い気持ちがあったからこそ、出来たんだ。
僕は薫なら出来ると思っていたからこそ許可しただけさ。本当によくやってくれたよ」
「あの子…… 連れて行かれたけど、これからどうなるのかな……
操られていただけなんだから、何の罪も与えられないよね」
ふいに今日、対峙していた『黒の幽霊』に洗脳され操られていた
バンダナの少年の事を思いだした薫は、その後の彼の対処を皆本に尋ねる。
自分の事よりも命を狙った相手の境遇すら気に掛けるのは、やはり同胞意識からそう思うのだろう。
この性格だからこそ、いずれあの薫になっていくのだと皆本は、
否定できずに現実を痛感させられていた。
「とりあえず、エスパー専用の拘置所で拘束されているが、
僕にも彼の処置についてはまだ分からない。
まだ子供という面から見て恩赦的な処置になるとは思うよ」
「ならよかった…… 」
皆本の言葉に薫は安堵を浮かべているのだが、皆本の内心は違っていた。
たとえ、薫たちより少し年上程度の子供で、洗脳されていたとはいえ、
数多くの人命を奪ったことには変わりない。
おそらく、未成年ということと、洗脳状態であったことで
情状酌量となり重罪にはなることはないだろうが、
この先彼は、当分日の目を見ることはまず無い可能性が高い。
自分の意思で行なったのではなくても、犯罪者としてのレッテルを貼られるのは確か。
自我を取り戻した今よりも、これからの彼の人生には大きな重荷として抱えていくのだろう。
そう考えると、彼が不憫で忍びない。
しかし今の彼には、どうこうする権力すら無いのだ。
世界的にも、エスパー犯罪での刑罰の重さは普通人の犯罪者よりも重くされる風潮を感じており、
それがエスパーだからこその人権差別意識に繋がる面もある。
そんな事実を、まだ子供である薫には納得など出来ないはず。
真実を話したりしたのなら、憤慨しながら傷付くのは分かっている。
大人という立場から、ここは心苦しくも薫に嘘を吐くしかなかった。
「あの『ブースト機能』は凄い効果あるな〜三人の力を合わせたら、あんな凄い力が出せたんだ。
あれがあれば、あたし達どんな不可能な事でも出来そうな気がするよ。もっと……
他に助けを求めている人を救えればいいな-------- 」
新たな能力を手にした充実感に薫は、本当に嬉しそうに微笑みながら皆本に話しかける。
しかし、その言葉が皆本の胸の傷を更に抉る。
彼は言葉に詰まり、胸を締め付けられながら何も答えられずにいる。
「お、おい…… 皆本どうしたんだよ ?! 急に泣き出したりして、
なんかあたしが変な事言ったのか ? 」
薫の言葉に耐え切れず、無意識に皆本は涙を頬に伝わせていた。
「な、なんでもない。薫の仲間思いに感動したんだよ」
慌てて作り笑いを浮べながら、その涙を手の甲で拭いながら、
嘘だとバレバレの言い訳をする皆本を見て、
薫は心配そうな顔を浮かべる。
皆本が、他に何か思いつめていることは見抜いている。
薫には大事な存在の人に、そんな顔などして欲しくない。
幼い頃から、そんな顔をした家族を見続け、
黙って見ている事しか出来なかったのを今でも辛く鮮明に覚えている。
「皆本…… なんか辛いことがあったりしたら、あたし達にも話してくれよな。
いつもあたし達は辛い時も、悲しい時も、
皆本に助けてもらっているんだから、あたし達にも話してもらいたんだよ。だって……
あたし達は、チームであり大切な仲間だろ ? 」
気遣った笑顔で、薫は皆本を元気づけようとする。
そんな仕草をする薫が、今の皆本には悲しく映る。
薫の言葉通りに、本音を話すことなどは、どうあっても出来ないのだ。
仲間を思うこの優しさこそが、あの薫へ繋がるのだと考えると、何よりも辛い。
普段なら、薫や紫穂、葵の優しさと笑顔で疲れを吹き飛ばせるのだが、
今の彼には薫のその笑顔と優しさが、何よりも辛かった-------
『女王』を自らが作り上げようとしているのかもしれない罪に苛まれながら、
薫を悲哀の眼で映し、咎人の十字架を背負ったように、深く彼は自分を責め続けるのだった。
お、終ります(汗)
・まだ完全に『黒の幽霊』編が終了し切れていない状態で、書いてしまいました(汗)
40号で、皆本が別の視点で薫の女王ロードを作り上げているという苦悩などや、
そんな事は無いと反論していたら笑ってやって下さいませ。
絶対に次週と話が繋がらないだろうな!(威張るなよ)
バンダナ君の境遇も勝手に捏造だしな。
本当は、次週が終わった段階で顛末を読んでから書いた方が賢明だとは思いますが、
捏造でも書きたかったです。
いつも薫を泣かせるパターンが多いので、今度は皆本をw
つーか、いい加減泣かせるオチを止めようよ、自分(苦笑)←レパートリー少なすぎ。
今、書きかけの別SSは、涙は無いですが、なんだかまー この話とオチが同じっぽい
んですけど(おい)
やっぱ、レパートリーが…org
と、とりあえずそちらは、早めに仕上げます。
しかし、自分…何かと皆本視点からの話しか書いていないことに、今更気がつきました(苦笑)
たまには、薫視点からも書かないといけないなぁ。
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