忘れられぬ思い 2

 

-------- ! 」

 拒絶するはずの、皆本のキスを自分の弱さで受け入れてしまった薫だったのだが、

我に返ったかのように念動能力で突き放すように、押し付けられた身体の自由を取り戻す。

「薫…… 何故だ ! 戻ってくるつもりで、受け入れたのじゃないのか ?! 」

 反対側の壁に埋めつけられた彼は、少し呻きながらも薫に問う。

「気の迷いよ…… もう私には、貴方は関係の無い存在よ。今の私は、パンドラの『女王(クイーン)』よ」

 先ほどまでの涙顔から一遍、再び『女王』と呼ばれる冷酷な薫の顔となる。

「勝手な事を言うな ! なぜ同胞のエスパーの為だからと、

君がそこまで自分を犠牲にする必要があるんだ ! BABELにいたままでも、

彼らを救える手立てはあるはずのに ! 」

 心の奥底から薫を引きとめようとする皆本の叫びが、薫の胸中を揺らしながらも、

苛立ちを感じさせる。

「本当に甘ちゃんだね、皆本は…… 所詮、エスパーと普通人じゃ、

結局、種の違う別の人種なんだよ。だからこそ、決してお互いを理解する事も受け入れる事も出来ない。

皆本にはエスパーの本当の辛さなんか全然理解なんてしていない。奇麗事ばかりしている皆本達じゃ、

誰も救えない所か、見殺しにするだけよ。だからこそ、法を犯してでも自分がどうなろうと私は、

手を汚してもエスパーの為に生きる。それが私の望みだから
--------- 

そう決めた時に、皆本への想いも捨てた。もう、私はあの頃の薫じゃない。だから、もう私の事は忘れて」

 皆本への未練を完全に切り捨てたかのような言葉を、

淡々と口にする薫だったのだが、言葉を紡ぐ度に、胸を抉られるような痛みが激しく起きる。

 本当の事を言っているだけなのに、どうしてこんなに辛いのかと。

 自分の気持ちに偽りは無いはずのだと。

 先ほどのキスは、ただ、心の弱味に付け入れただけなのだと、自分に言い聞かせようとしている。

「嘘だ !! 君は本当の事を言っていないだろ ! どうしてそこまで、自分を欺くんだ-------- !! 」

 悲痛な声を上げ、埋め込まれていた壁から、強引に抜け出し納得できない皆本は再び、

薫の腕を掴み上げようとするのだが、その手は不可視な薫の念動力で弾かれる。

 明らかな拒絶と、決別を表していた。

 そこにいるのは、かって愛しあった薫ではなく、『破壊(クイーン)(オブ)女王(カタストロフィー)()

と呼ばれ恐れられるエスパーの姿がある。

 薫の差し伸ばされた腕が、皆本の方向に向けられ手の中で高エネルギー体が収縮し始めている。

 皆本を攻撃するつもりなのか。

「僕は、決して君を忘れるつもりなんか無い !! 絶対に連れ戻す !! 」

 薫の威嚇にもひるむことなく、皆本は薫に叫ぶ。

 薫は覚えていないだろうが、過去に彼女を守り抜くという約束の絆の強さを信じ、後には引かなかった。

「………… 」

 彼の言葉に無言のまま、薫は皆本に向けてエネルギー体を撃つ。

 咄嗟に皆本は攻撃から回避するように、横に飛ぶ。

 エネルギー体は、皆本のいた目前に着弾した後、激しく周囲の物を巻き上げ破裂し、

凄まじい粉塵が襲い、思わず皆本は顔を覆いながらも、

やはり薫は本気で自分には攻撃していなかった事を悟る。

 そんな事が出来ない人間だと、誰よりも彼は理解していた。

 おそらく、この視界の悪さに紛れて逃げ切るつもりなのだと。

(そんなことはさせない-------- !! )

 視界の悪さの中、強引に彼は薫のいた方向に駆け出す。

 途中、目や口に異物が入り込もうとも、突き進む。

「薫 !! 」

 視界の先に、朧気に薫の姿を発見して、手を指し伸ばすのだが、

届く刹那、薫は姿を消した
---------

垣間見えた薫は、冷酷さの中に、辛さを滲ませながら。

 残された皆本の悲痛の叫び声だけが、響き渡っているのだった。

                             3に続く

                                   1に戻る。

◆書き逃げシリーズのつもりが、その後のネタが浮かんだので、

 話が破綻するまで、書いてみようかとw

 今回の皆本…もう、叫んで薫ばかり追いかけるだけですねー。

 自分の意見ぶつけて、薫の事、全然考えていないので、

その辺の話もいづれ、書こうかと。




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